個人向けCNC工作機は大抵、3軸(※X軸・Y軸・Z軸のこと)で、エンドミルという刃物を使っています。私の機械はエンドミルを咥えるスピンドルの穴の径(シャンク径といいます)が4㎜径なのでエンドミルの軸の径も4㎜となります。
〇スクエアエンドミル
エンドミルはドリルと異なり鉛直方向だけでなく、水平方向にも切削することが出来ます。
通常、切削に用いるのはスクエアエンドミルで、刃先の断面形状は“四角”です。
写真は左から1㎜・2㎜・3㎜・4㎜径のスクエアエンドミルです。
〇ボールエンドミル
ボールエンドミルの刃先の断面形状は“半円”です。切削の抵抗が少ないので、1回に削る深さをスクエアエンドミルより多く設定できるので粗削りに用いたり、切削の断面形状がスクエアエンドミルのように階段状にならないので、断面形状を滑らかな曲線にしたい時に用います。写真は左からR=0.5・R=1・R=1.5㎜のボールエンドミルとなります。
〇エンドミルによる切削の特徴
X軸(よこ)・Y軸(たて)・Z軸(高さ)の数値をコードで設定することにより、極めて精密な加工が可能で、個人向けCNC工作機の場合、柔らかい金属(ジュラルミン・アルミ・真鍮など)から電子基板に使われるベークライト・アクリル・POM・ABSなどの樹脂系材料、MDF・合板・樹木無垢材など木質系材料の切削が出来ます。
精密な加工を得意とするCNCですが、削る・彫る・切断するなど個々の切削能力は従来の工具と比べ効率面で著しく劣っており、長時間の運転を余儀なくされます。
現在制作中の置き時計は20mm厚の板を使用しています。家内に見せたところ背面のムーブメントの出っ張り(約15mm)は何とかならないのかと言われ、板を15㎜彫り込むと10時間かかると答えました。その後もこの件が気になり、結局4㎜径のボールエンドミルを購入し、約5時間切削してムーブメントを板におさめました。
スティーブジョブズの存命中から、アップルのiphoneやMacBookはアルミの板からCNCで削りだしています。大量に販売されるアップル社のノートパソコンやスマホを、CNCで気の遠くなるような時間をかけ、切削するというのは“ジョブズのこだわり”があったからこそです。アルミの削りだしはプラスティックの樹脂成型とは一線を画するプレミアム感があります。
設計・デザインと製作の両方を行う私にとって、長時間の切削はどうしても逃げたくなるところですが、今回はあえて挑戦してみました。
(おわり)