モノノミカタ ~CNCを使った木工作品についての説明書きなど

自然と人をつなぐモノづくり。創作する上で知ったこと、考えたこと。

木材の3次元切削とアート(芸術)表現

久しぶりの更新です。

日々、CNC工作機を使った木工について試行錯誤していますが、未だ三次元切削に大きく踏み込めずにいます。問題は入口(3Dモデリング)と出口(多面加工)のハードルの高さと、三次元でモノ(作品)を作りたいという衝動が湧いてこないことにあります。

三次元らしきモノ(作品)としては、木材の丸みのある手触りを出すためにVCarveの3Dクリップアートを使う程度です。

例:シュリザクラのマグネット~クリップアート「Circuler」

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例:猫耳付きマグネット~クリップアート「Domes」

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〇3次元データを利用した作品製作の例

このような自分とは対照的に、豊かなバイタリティーでこのハードルを乗り越えた強者(つわもの)をYouTubeで見つけました。

動画の投稿者Dennis van Hoof 氏は博士号を持つ科学者で、アメリカの郊外で作業小屋を建て、CNC加工機による木工を愉しみ、現在、一ヶ月おきにCNC動画をアップしています。

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CNC carving a violin out of olive wood with the Shapeoko XXL

なんとShapeokoでバイオリンを作っています。ただし、いきなりバイオリンが切削できた訳ではなく、いくつかの作品でステップとなる治具や技術の開発が前提となっており、過去の動画で確認出来ます。ここでは動画の概要として「製作の流れ」と「アート(芸術)表現」についてまとめました。

1.製作の流れ

①三次元データの入手、CNC用に加工・修正

ストラディバリウスの三次元データーを入手し、CNC加工用に修正。既出の動画から、多分、Turbosquidでストラディバリウスのデータを購入したのだろう。MeshMixerで4つのパーツに分割(リンクを参照)。

②木材材料の入手と加工

彼独自の材料(オリーブウッド)をetsyストアで入手。穴あき部分はエポキシで埋め、デザイン要素として活用。

③パーツの切削

リブは壊れやすいので適宜ネジで固定し、片面切削。表板・裏板は両面加工。切削は1週間かかるので座標の喪失に備え、センターを記した原点板を設けた。

ネックはダボ穴と四角い「ロック」で固定する4面加工(ロック&キーの手法)。

④組立て

表板へテールゲートサドル、本体の接着。木工ボンドなので分解は不可能。本体内側はクイックセットエポキシの薄い膜で追加のねじり剛性を確保。ネックを取付後、位置合わせの木材(ヘッド)を切り離す。

⑤塗装

自作の乾燥箱にバイオリンを固定し、ニスを塗布。乾燥している間にナットと指板を作成。

⑥部品の取り付け

弦やペグやテールピースなどの既製品の取り付け。駒の取付も型を使って削り出し、本格的。この方はバイオリン製作をよく勉強されている。

2.アート(芸術)表現

 3Dデータを購入してCNC出力するだけなら複製(レプリカ)の製作に止まります(一般向けCNC加工機での製作はとんでもなく高い技術力だと思うが)。しかし、製作者はあえて木材をカエデやスプルースではなく、高級家具に用いられるオリーブウッドを使用し、さらに割れ目にエポキシを注入することにより、現代的なアート(芸術)表現を行っています。

動画のはじめに紹介がありましたが、既に「空気」「水」「火」「大地」という4種類のバイオリンを製作しているようで、CNC加工にも手慣れた感じが伝わってきます。

 

〇3次元データを活用するなら

この事例から3次元データを活用するのであれば、次の3つの視点を踏まえるべきでしょう。

1.再現価値の高い3Dモデルを選択

Turbosquidには様々な3Dモデルのデータが無料・有料で販売されている。ストラディバリウスや零戦など、自身に美しさを備えたモデルを選択する。パーツの分け方、変形など、MeshMixerで上手く三軸のCNCに展開できるかが製作上のカギ。

2.木材ならではの良さを表現する

木材の色や木目、質感などを生かせるような活用を行う。3Dプリンター出力で出来ない表現でないとCNCを使う意味がない。バイオリンのように実物も「木材」で出来ているものは違和感が少ないと思う。

3.他の素材との組合せも検討

CNCで加工が可能なアルミや真鍮、アクリルなど、他の素材を木材に付加することも検討する。

 

とにかく何をアート表現として目指すのかが重要で、表現に対する強い衝動がないと面倒なCNC加工を行うためのデータの修正や、長時間(数日~数週間)に及ぶ切削作業には耐えられません。

Dennis van Hoof 氏の場合、三次元切削と、木材・エポキシの組合せに可能性を見いだし、トルソー、鯉、地球、カエルと葉、コリント式柱、蝶、貝、バイオリンなどに取り組むことにより、三次元切削の技術と表現の幅を拡げてきました。

製作モデル 三次元切削の技術
トルソー 輪切りパーツを両面切削
手動回転セットアップによる三面切削
地球 手動回転セットアップによる四面切削
カエルと葉 垂直タブによる両面切削
コリント式柱 ロック&キーの手法による四面切削

この方向に興味のある方にはとても参考になる事例だと思います。

 

(おわり)