1.木材への塗装
塗装は苦手です。昔から気分にムラがあるのか、綺麗に塗ることが出来ません。
モノが小さく、曲線や角が多い、表面の複雑な“木材の小物”が対象であれば、なおさらです。
(1)塗装前の下地処理
最近、会得した下地処理のコツとして、
・紙やすりで表面を適度に荒らす
240番から320番で仕上げています。CNCでの切削面はエンドミルが何回も通ることになるので、“上”の方ほどツルツルになり、水分を弾きやすくなります。また年輪部分が硬く、テカっていることもありますので、一様に表面を荒らします。
・ピン角を丸くする
ピン角には塗料がのりません。塗膜が薄いので研磨したときにすぐにハゲます。
(2)塗料の選択
木材の塗料には大きく分けて、塗膜を作るものと、作らないものがあります。
塗膜を作らないものは、屋外使用など対候性が求められる場合は、さらに塗膜を作る塗料で上塗りが必要です。
〇塗膜を作らないもの ~オイルフィニッシュ(亜麻仁油)、ステイン(油性・水性)
〇塗膜を作るもの ~ワックス、ニス(油性・水性)、ウレタン塗料(油性・水性)、アクリル塗料
亜麻仁油や蜜蝋ワックスは、塗料という感覚なしに使っていますが、今回は着色が目的ですので除外します。さらに溶材を使用する油性塗料は自分の体質がうけつけませんので選択から外しました。
塗装を重ねる場合には油性塗料には油性塗料、下塗りが水性塗料の場合には上塗りは水性塗料です。
ムラが出来にくい塗料を探していたところ、海外の動画で、じいさんがステインの中にチェスの駒(木材)を“どぶ漬け”するのを見て、コレだ!と思いました。
ステインは木目を活かした着色が出来ますが、塗膜を作らないため上塗りが必要という“面倒な仕様”であるにもかかわらず生き残っているのは、この“ムラになりにくい特性”があるからだと思います。塗って、乾く前に拭き取ることで、色に濃淡が出来ることを防ぐことが出来ます。
(3)着色の試作
下はミニチュア・バイオリンの試作(カエデ材に着色)です。上塗りは透明なウレタン塗料をのせています。かなり一様に塗れました。ムラに見えるのは材の木目です。
2.木材への文字入れ
木材への文字入れは、レーザーにより“焼き”コゲの色で表現するのが主流です。レーザーの場合、表面の状況によりますが、最終の工程で位置決めをして文字入れすれば何の問題もありません。先日(下記)のエントリ参照。
www.natural-arts.jp(1)CNCを使って文字表現する意味
なので一般的には、木材への文字入れで、あえてCNCを使う理由はないのですが、“切り絵”に見られるような線の切れ味や、凹凸の表現・触感を楽しむといったかなり“高級な表現”を目指す場合にはアリかなと思います。
(2)切削文字への墨入れと塗装
先日のエントリに書いたように、木製看板への墨入れは昔ながらの方法で出来ますが、文字の墨入れと全体の塗装を両立させるには試行錯誤が必要です。
木材を着色した後で文字を切削し墨入れすることは、よほど大きな看板でないと難しいので、文字に墨入れした後に本体を塗装することになります。
文字切削→砥の粉で目つぶし→表面を研磨→墨入れ→表面を研磨→ステイン(水性)で着色
⇒墨汁がステインに溶けて滲みました。なので✖
墨汁の代わりに、乾くと水に溶けないアクリル塗料(アクリル絵の具)を使ってみました。
文字切削→砥の粉で目つぶし→表面を研磨→墨入れ(アクリル塗料)→表面を研磨
⇒切削文字部分に“充填”したアクリル塗料がとれてしまった。ので✖
砥の粉は木材の凹凸に嵌っているだけで、木材と塗料を接着しませんので、塗料を定着させる“プライマー”が必要だとわかりました。
プライマーは油性塗料用のものが多く、水性で使えても溶材入りということで、やっと見つけたのがこの“ウッドプライマー”。メーカーにプライマーの色を問い合わせたところ、乳白色の液体が塗れば透明になるとのことでしたが、乾いても白いままです。
文字切削→ウッドプライマー→表面を研磨→墨入れ(アクリル塗料)→表面を研磨
⇒研磨したアクリル顔料が周りの木目に入り込んでしまった!(下の写真)✖
ウッドプライマーは、砥の粉が物理的に穴に入り込むのに対して、膜をつくるもので、プライマーが乾いた後、表面を研磨すると剥がれてしまうのでしょう。プライマーの付いていない凹にアクリル塗料の削りカスが付着してしまったと考えられます。
現段階でのベストな工程は以下の通り。
文字切削→ウッドプライマー(必ず1日乾かす)→墨入れ(アクリル塗料)→表面を研磨→ステイン(塗り重ね・軽く研磨)→ウレタン塗装(塗り重ね・軽く研磨)
ウッドプライマーを1日乾かした後、切削した文字にそのまま、アクリル塗料を塗り込みます。
研磨後、色付け塗装して完成。
長い検討の末、やっと及第点のものが出来ました。
塗装メーカーの色見本や商品説明が極めてアバウトで、結局買って試してみるしかないことが多々ありました。(メーカーにとってはそれが狙いか!笑)
今回の検討はとても苦労したので秘密にしようかと思いましたが、これからCNC工作機でモノづくりをされる方が、“車輪の再発明”しないことを願って掲載しました。
(おわり)