前回ブログ「チェロ板(エンドピンストッパー)について」では国内のコンサートホールの舞台に使われている床板・構造を基にヒノキ無垢材のすぐれた特性を明らかにし、その結果から床構造別にエンドピンストッパーを設定しました。
www.natural-arts.jp今回はその後、製作と検討を重ねた上での結果と変更点について報告します。
1.名称の変更
チェロは表板はスプルース(ベイトウヒ)、裏板・側板はメイプル(セイヨウカジカエデ)、指板はコクタンが使われています。
ピアノには「響板」というスプルース(ベイトウヒ)を用いた音響部材があり、「高い倍音成分をカットし、耳に心地よい楽音成分だけを残して豊かな響きに変えている」(上記ブログ参照)とのこと。チェロの表板は「響板」の役割を果たしていると考えられます。
木材の共鳴効果はその硬さや重さ、木目の粗密などに左右されると考えられますが、ここでは比重という指標で単純化して考えます。資料(木材博物館・木材の比重リスト他)によるとスプルース(0.46)、メイプル(セイヨウカジカエデ0.6前後)、コクタン(1.16)。
私がエンドピンストッパーや木製スピーカーを製作する過程で偶然見つけた音のよい木材がヒノキです。ヒノキの比重は0.41(0.34~0.54)でスプルースと重なります。前ブログの論文だけでなく「郡上踊り」の踊り下駄にも“音の良さ”でヒノキが使われている事例があります。
以上より、ヒノキを使ったエンドピンストッパーはエンドピンの滑り止め機能だけではなく、“耳に心地よい楽音成分だけを残して豊かな響きに変える”アイテムであることから「エンドピン響板」という名称に変更しました。
2.木材(合板を含む)床に適したエンドピン響板の構造
巷(ちまた)で最も使われているエンドピンストッパーは「ブラックホール」ではないでしょうか。以前から私も使用しています。
円形のゴムの塊ですが、真ん中のくぼみはプラスチックの樹脂で出来ていて、裏から触るとゴムが薄くなっています。これはエンドピンの振動を出来るだけ妨げずに床に伝えたいという意図で、チェロを弾くと床もビンビン響きます。
下の写真は木材床用に製作した「檜(ヒノキ)無垢材+比重が重めの板」の作品(裏面)です。ヒノキに比重の重い板を貼り合わせ、音質としては芯のあるバランスのとれたものでしたが、ブラックホールほど木材床を共振させることは出来ませんでした。
そこで床が“比重が重めの板”なら「木材床と一体化」させればよいと気づきました。つまり前ブログの論文の“A-2の床構造(檜無垢材+合板)と同じ!”になります。
木材床用の新しい構造は下図の右のようなイメージとしました。
ヒノキ板の底に薄いゴム(現在はウレタン製1mm厚)を貼り、滑り止め効果を付加しています。弾いてみると足のウラにビンビン響くし、響板効果も発揮されていて素晴らしい。但し、右図・コンクリート下地床用のスパイク形状ゴムほどの滑り止め効果はありませんので紐で引っ張る形状となります。
3.エンドピン響板のデザイン
現在ハンドメイド通販サイトに掲載しているアイテムを紹介
(1)木材床用
円形タイプ
木材床用は紐が必須となったので紐ありきのデザインとした。エンドピンの力のベクトル方向を意識しエンドピンの孔(コクタンの木象嵌)も微妙に手前に寄せている
バータイプ
エンドピンをそのままヒノキにさす、コンサートホールの舞台環境に近い仕様。面積も大きく音響的に有利
(2)コンクリート下地床用
円形タイプ
普遍的な丸形デザイン。上部エッジは45度の面取りでシャープさを演出
正方形タイプ
同じく普遍的な正方形デザイン。上部エッジは45度の面取りでシャープさを演出
楕円タイプ
CNCによる外周のくり抜きを省いた廉価版
チェロ型タイプ
当初からのストラディバリウスのチェロ形
(おわり)