モノノミカタ ~CNCを使った木工作品についての説明書きなど

自然と人をつなぐモノづくり。創作する上で知ったこと、考えたこと。

ネオジム磁石の活用について/CNC工作機による木工小物製作

ネオジム磁石が手に入りやすくなったことで、CNC工作機による木工小物製作は自由度が上がったと感じています。現在、薄もの木材を使った小物のふた開閉や、飛行機マグネットに活用。ネオジウム磁石の活用方法をCNC-ARTの特色まで昇華できたらと考えています。

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1.ネオジム磁石とは

◯ネオジム磁石とは

・ネオジム磁石(ネオジムじしゃく、英語: Neodymium magnet)とは、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする希土類磁石(レアアース磁石)の一つ。

永久磁石のうちでは最も強力とされている。

1984年にアメリカのゼネラルモーターズ及び日本の住友特殊金属(現、日立金属)の佐川眞人らによって発明された

・主相はNd2Fe14B。

◯特徴

・磁束密度が高く、非常に強い磁力を持っている。

・磁気の強さにはN24からN54まで(理論上はN64まで)の等級付けがされる。Nの後の数字は磁気の強さを表している。

・数cmの大きさでも10kgf以上の吸着力があるため、扱う際には指を挟まないよう手袋をするなどの必要がある。

◯利用

利用される製品の範囲は小型から大型まで幅広い。

・大型の製品の例としては、電車・電気自動車・ハイブリットカー・エレベーター駆動用の永久磁石電動機の界磁などがある。

・小型の製品の例としては、ハードディスクドライブやCDプレーヤー、携帯電話などが挙げられる。ハードディスクドライブでは、ヘッドと呼ばれる読み書きする装置を移動させるためのアクチュエータに用いられる。

・音響機器においては、より固いダンパーを採用可能であることから締まった低音が出るとされ、近年のヘッドフォンのドライバーの多くに用いられている。サイズを小さくしても強磁界が得られることから特に小型のインナーイヤー型・カナル型ヘッドフォンには欠かせない。

◯欠点と対策

機械的に壊れやすいほか、加熱すると熱減磁を生じやすい(キュリー温度は約315℃)という欠点がある。

・対策として、ジスプロシウムを添加し保磁力を向上させる手法が存在する。1%のジスプロシウムの添加で熱減磁が15℃改善するといわれている。ジスプロシウムは希少な資源であるため、最近ではジスプロシウムを使わずに、ネオジム磁石の結晶粒径を小さくすることにより、熱減磁を改善する研究が行われている。しかし、ネオジムは酸素との反応性が強く、磁石の結晶粒を小さくすると、空気と触れる表面積が増えるため、自然発火することがある。このため、酸素を除外した環境で製造する必要がある。

・また、非常に錆びやすく、製品として用いられる際にはニッケルでめっきされていることが多い。

(以上引用 ネオジム磁石 - Wikipedia

 

2.ネオジム磁石の吸着力の目安

ネオジウム磁石の形態(断面形状や厚み)によって吸着力は変化します。算定式のようなものがないか探したところ、磁石メーカーのWEBサイトを見つけました。

例えば円筒形のネオジム磁石で、同じ材質(例えばN50)・直径で、厚みが倍であれば、鉄板への吸着力もほぼ倍になるようです。直径や断面形状が違う場合、このサイトに数値を入れることで確認できます。

数式が公表されていればよいのですが企業機密のようです。

 

3.木工小物製作とネオジム磁石

前項で見たように、ネオジム磁石は非常に強い磁力を持つ磁石ですので、小さいものでも十分な吸着力を持ちます。CNC工作機は磁石を納める穴もコンマ1㎜単位で切削できるので、CNC工作機による木工小物製作とネオジム磁石は非常に相性が良いと言えます。

 

〇飛行機マグネット

飛行機のマグネット企画で10種類(T-38、零戦、スピットファイア、ボーイング747、P-38、隼、メッサーシュミット、F-14、F-15、ユーロファイター)の「飛行機マグネット」を製作しました。飛行機の細い胴体の中でも埋め込める、小さくても強力なネオジム磁石ならでは活用方法です。

下のブログでは直径3㎜、高さ3㎜の円筒形磁石を1個使っていますが、さすがに吸着力が弱いので、直径3㎜、高さ5㎜の磁石を2個以上使用するようにしています。

折角木材のパーツを分けて嵌合させているので、磁石は中に封じ込め、外から見えなくしています。白い材はイタヤカエデです。

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〇譜面台鉛筆置き

スチール製折りたたみ譜面台の下部へ、ネオジム磁石で吸着される形で木製の鉛筆置きを保持する「バイオリンモチーフの譜面台鉛筆置き」。譜めくりの邪魔にならない利点があります。

直径3㎜、高さ5㎜のネオジム磁石を3個使用しています。カチッと気持ちの良い装着感があります。作品(写真)の材はウォルナットです。

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〇印鑑ケース

従来の木工小物製作では蓋の開閉は蝶番が用いられていますが、金具や木ネジを使用することは煩雑で、しかもCNC工作機の特徴を活かすことにはなりません。

そこでネオジム磁石を“蝶番に当たる支点”(※この場合は水平回転ですが)と“留め具”に用いた事例になります。下の作品は「印鑑ケース『下弦』赤」。直径5㎜、高さ3㎜のネオジム磁石を上下2組、計4個使用しています。本体の材はケヤキ、蓋はパドックです。

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今回はネオジム磁石の活用例についてまとめました。磁石を埋め込むことで「吸着」や「開閉」の動作に快感が生まれます。また形状もシンプルなのでCNC-ARTの表現の一つとして特筆に値すると思います。

 

(おわり)