数か月前、東京都新宿区の「東京おもちや美術館」を訪ねました。廃校になった小学校の一部を利用して最近できた新しい「木のおもちゃの美術館」です。
この施設を訪ねた目的は、木材を魅力的に見せているモノ(おもちゃ、アイテム)はないかと探しに行ったのですが、対象がおもちゃなのでカラフルに着色され、角も十分に丸められた楽しさと安全を意識したものが多かったです。
職員の方が苦労してやすりでヒノキ材を削った2万個の「木のボール」は圧巻ではありましたが、自然界にはないものですし、木材の研磨の大変さを知っているだけに気の毒に思いました。
私が触れて“コレだ”と思ったのが「おやさいモグモグ」というおもちゃ(ゲーム)の、(箱の顔が銜(くわ)えている)チョコパイの形をした板。ヒノキとサクラの薄板を上下にあわせて野菜の形を表現していますが、木材の素地を活かすとともに、触ってみると板に微妙で絶妙な勾配がつけてあります。
木材を使うならその魅力を十分に見せ、感じてもらうことが大事だと思います。
木目を隠してしまうような着色や、フラットでツルツルな触感ではプラスチックと変わりません。
素地を見せ木目や色を活かすこと、触ってはじめて分かる木を感じさせる微妙な丸み、勾配(微小なかまぼこ型?)を取り入れることで、木のあたたかみや安心感、そして自然を感じさせることになるのだと思います。
下の写真はミニチュアバイオリン(茶)。素地を活かし(湿潤研磨+蜜ろう仕上げ)、触(さわ)ればわかる丸みをつけています。
実は本物のバイオリンは胴の縁(へり)からF字孔・駒付近にかけて、きついカーブで盛り上がっており、真ん中付近は縁の厚みの倍くらいになります。それはまたきれいな造形ではありますが、キーホルダーでの再現は難しいので、微小で自然な勾配を取り入れています。
(おわり)