落合陽一氏のSDGsの書籍。主として専門の科学技術から見た世界の変化と展望について、独自の視点で最新の情報を網羅したものです。
日頃、ESDやSDGsに関わる活動をしていますが、SDGsにどう向き合っていったらよいのか、自分でもはっきりしていません。落合氏は「はじめに」で、SDGsの理解が深まらない理由を3点上げ、各々についてその対策を示してくれています。
①主題となるテーマと各国の問題の結びつきのわかりにくさ
対策として、一見、自分の国とは関係なさそうなものでも、視点をひとつ上のレイヤーに向けトップダウンでー。例えば、「少子高齢社会におけるコンピュータの活用」ではなく、「情報技術を人々の生活の中でどうやって共存させ、多様な能力を持つ人々の生活を豊かにするために使っていくのか」という言いかえをすることにより、多くの国がローカライズされた自国の問題に目を向けることが出来る。
②根本にある持続可能性のわかりにくさ
もともと式年遷宮や、詫び寂を愛でる文化があり、長い歴史の中で自然とサスティナブルな様式を育んできた日本。 明治維新や戦後以降、工業化の最中で半ば流される形で自由主義に舵を切った現代の日本においては、サスティナブルな考え方が希薄になっているのではないか。拝金主義やSNSでの炎上など、現代日本では公共において社会を守ろうという感覚が薄い気がする。持続可能性は捉えにくいが、具体例に落とすと理解しやすい。身近な例を思い出し再考する必要がある。
③問題解決の過程の複雑さ
国境を越えて起こっている問題が多く、一国の自助努力ではどうにもならない課題がほとんど。国連は2030年までSDGsに取り組んでいくので、その間、各国が同じ目標に向かっていくことになる。全世界の人が取り組む問題なので、問題意識を共有して自分の意見を持つことは同じ地球人として非常に大切。問題への認識、どのように解決していくべきか、自分の興味を掘り下げて、自分なりの意見を持ち、日々行動する。
SDGsは世界共通の目標であることに価値があり、小さな力も同じ方向で結集すれば世の中を変える大きな力となります。先ずはSDGsの17のゴールと169のターゲットを俯瞰し、興味のある分野を自分なり掘り下げることが大切ですね。
以下は、本書の目次に内容を思い出すためのメモを付加したものです。
2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望
- 作者: 落合陽一,.
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2019/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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目次(+メモ)
はじめにー2030年の世界はどこに向かうのか
第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー
テクノロジーと人口で未来を俯瞰する
5つの破壊的テクノロジー
①AIなど機械学習関連技術領域
②5G
③自立走行(自動運転)
④量子コンピューティング
⑤ブロックチェーン
【テクノロジー】テクノロジーで変わる2050年までの世界
食料 ー食物の完全なコントロールが可能に
・「2019年の5in5」
(IBM Researchが行っている今後5年間のテクノロジー予測)による
健康 ーAIの活用や再生医療が進む
・「ロボット手術」
・iPS細胞による再生医療 ~腎臓・歯・角膜・心筋など
・診断でのAI活用
・遺伝病の治療のためのゲノム編集技術
資源 -太陽光が巨大エネルギー産業に
都市 -高密度化する大都市
労働 -専門職の代替が急速に進む
【人口・GDP】2030年以降は中国・アメリカ・インドの時代に
GDPは、中国・アメリカ・インドが三強に
中国はアジア・ユーラシアで覇権を握るか -テクノ地政学とランドパワーの復権
2020年代を牽引する4つのデジタル・イデオロギー
《アメリカン・デジタル》
《チャイニーズ・デジタル》
《ヨーロピアン・デジタル》
《サードウェーブ・デジタル》
サードウェーブ →「近代」を経ずに経済発展。インドやアフリカ諸国など
落合陽一×安田洋祐 対談〔持続可能な経済発展は、そもそも可能か〕
問題は「アフリカの貧困」よりも「先進国の格差拡大」
第2章 「貧困」「格差」は解決できるのか?-サードウェーブ・デジタルと、個人の可能性
THEME2-1 貧困
「未来の可能性がない」ことも、貧困のひとつである
先進国内部に広がる相対的貧困
ギグ・エコノミーとフリーランス型の貧困
シングルマザー・高齢者・子どもの貧困
THEME2-2 教育
インターネット以後の開かれた教育は格差を打ち破るか
eラーニング(インターネットを通じた学習サービス)
MOOC(大規模公開オンライン講座)(無償の大学教育講座)
「Coursera」「edX」
「JMOOC」、「gacco」 「スタディサプリ」(国内オンライン講座)
「ネット高校」 ~N高等学校
落合陽一×池上彰 対談〔アフリカの貧困地域のために何ができるか〕
第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題
-GAFAMは「環境」と「資本主義」の対立を超えるかTHEME3-1 環境
現在の地球の大気中の二酸化炭素は、過去80万年で最も高い数値
THEME3-2 環境とエネルギーの地政学
アメリカと中国が鍵を握る環境保護政策
・太陽光でアジアにエネルギー経済圏構築を目論む中国
・アメリカは二酸化炭素排出量の少ないシェールガスで、問題解決を目指す
・しかしアメリカ西海岸は太陽光発電など再生可能エネルギーを支持
「ガイア仮説」と「プラネタリー・バウンダリー」
限界費用ゼロ化による持続可能な社会の到来
・「所有」から「共有」・「共感」へ ~デジタルテクノロジーの覇権が鍵
落合陽一×宇留賀敬一 対談
〔エネルギーと地球温暖化についていま世界で起こっていること〕
第4章 SDGsとヨーロッパの時代 -これからの日本の居場所を考える
「SDGs」というヨーロッパ式ゲーム
・「法と倫理」で資本主義を支配するヨーロッパ
・ヨーロッパの法による防壁・GDPR VS GAFAM
ヨーロピアン・デジタルの資本主義
日本は、米・中・欧の中間地点に活路がある
・文化とテクノロジーの両輪で付加価値を上げていくスイスのようなアプローチ
→単純な集積でない組合せ技術「デジタル発酵」
→ローカリティーを活かして思いもよらない方向への進化に勝ち筋を見出す
落合陽一×池上彰 対談〔なぜ、世界の問題は解決できないのか?〕
SDGsは各国の利害を勘案した上で選ばれた最大公約数的な問題設定
→LGBTQ、兵器の削減、労働搾取の基準、信教の自由も入っていない
(おわり)