子どもの頃から乗り物、特に飛行機が好きで、よく零戦の絵を描いていました。
高校の頃だったか、『設計からの発想』という本を読んで、設計だとかデザインが好きになり、多分自分は設計方面へ行くのだろうなと思っていました。
結局、私は林学を学び、造園(公園)設計をすることになるのですが、著者(佐貫亦男氏)のヨーロッパの国々と日本のモノづくりに対する考え方の比較が面白く、先日思い出して押入れの奥から取り出してきました。
ちょうどCNCの木工小物づくりで零戦を作りましたので、この本の中から零戦と隼(はやぶさ)の比較の話を取り出します。
零戦は日本海軍の代表戦闘機なら、隼は日本陸軍の代表戦闘機です。同時期の開発で、同じエンジン、ほぼ同じ寸法(中期ごろ)、同じ重量なので、正面からみると設計条件からほとんど見分けがつきません。しかし平面図(上から見る)や側面図(横から見る)と全く形が違います。
〇零戦
〇隼
著者の主張を要約すると、
・この場合、目的が定まり、エンジンが決まったら正面図の形と寸法は決定されるが、側面図、平面図に現れる形態は、考え方により無数の組合せがある。
・その場合分けの中から一つをチョイスするとき、設計者はデザイナーになる。
・デザイナーは無数の形態の中から、見る者の精神を高揚させるものを、場合に応じて予測しながら(この時、高度のフィードバックがある)選択するから。
・すべてが計算により決定されると思われがちな飛行機の設計にも、大きくデザイン的要素がある。
とのことです。
著者は他にイギリスのスピットファイアと、ドイツのメッサーシュミットの比較をしています。メッサーシュミットは翼面荷重が大きいため高速であったが、未熟なパイロットには重荷であったこと、プロペラ軸が低い倒立エンジンのため高い脚は、離着陸事故を多数発生させたことから、人間に冷たい設計であった(下図)と断じています。
※図面の出典はいずれもWikipediaから
「比較設計学」においてモノを比べてみると、最後は設計者の人間性までもが比較され浮かび上がるので、設計者としてはやりがいがある反面、怖い話でもあります。
(おわり)