モノノミカタ ~CNCを使った木工作品についての説明書きなど

自然と人をつなぐモノづくり。創作する上で知ったこと、考えたこと。

設計からの発想/比較設計学/零戦と隼

子どもの頃から乗り物、特に飛行機が好きで、よく零戦の絵を描いていました。

高校の頃だったか、『設計からの発想』という本を読んで、設計だとかデザインが好きになり、多分自分は設計方面へ行くのだろうなと思っていました。

設計からの発想―比較設計学のすすめ (1979年) (ブルーバックス)

設計からの発想―比較設計学のすすめ (1979年) (ブルーバックス)

 

 結局、私は林学を学び、造園(公園)設計をすることになるのですが、著者(佐貫亦男氏)のヨーロッパの国々と日本のモノづくりに対する考え方の比較が面白く、先日思い出して押入れの奥から取り出してきました。

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ちょうどCNCの木工小物づくりで零戦を作りましたので、この本の中から零戦と隼(はやぶさ)の比較の話を取り出します。

零戦は日本海軍の代表戦闘機なら、隼は日本陸軍の代表戦闘機です。同時期の開発で、同じエンジン、ほぼ同じ寸法(中期ごろ)、同じ重量なので、正面からみると設計条件からほとんど見分けがつきません。しかし平面図(上から見る)や側面図(横から見る)と全く形が違います。

〇零戦

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〇隼

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著者の主張を要約すると、

・この場合、目的が定まり、エンジンが決まったら正面図の形と寸法は決定されるが、側面図、平面図に現れる形態は、考え方により無数の組合せがある。

・その場合分けの中から一つをチョイスするとき、設計者はデザイナーになる。

・デザイナーは無数の形態の中から、見る者の精神を高揚させるものを、場合に応じて予測しながら(この時、高度のフィードバックがある)選択するから。

・すべてが計算により決定されると思われがちな飛行機の設計にも、大きくデザイン的要素がある。

とのことです。

著者は他にイギリスのスピットファイアと、ドイツのメッサーシュミットの比較をしています。メッサーシュミットは翼面荷重が大きいため高速であったが、未熟なパイロットには重荷であったこと、プロペラ軸が低い倒立エンジンのため高い脚は、離着陸事故を多数発生させたことから、人間に冷たい設計であった(下図)と断じています。

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※図面の出典はいずれもWikipediaから

 

「比較設計学」においてモノを比べてみると、最後は設計者の人間性までもが比較され浮かび上がるので、設計者としてはやりがいがある反面、怖い話でもあります。

 

(おわり)

 

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